ミックス時に使用するコンプレッサー(コンプ) 〜ミックスダウンのステップアップ実践講座〜

今回はEQ(イコライザー)と同様に、ミックスダウンの必須プラグインであるコンプレッサー(コンプ)の解説をします。

内容は「ミックス時のコンプレッサーの役割」「各パートのコンプレッサー」「トータルコンプで曲全体のバランスを整える」「バスコンプでまとまりを出す」です。

各パートだけではなく、トータルコンプやバスコンプなど、コンプレッサーはミックスのさまざまな場所で使用します。

ミックス時のコンプレッサーの役割

コンプは音を均一化するダイナミクス系に属するエフェクター

ボーカル、ドラム、ベース、ギターなど主要パートでは、ほぼすべてに使うコンプレッサー(コンプ)は、小さな音は大きくして、大きな音は圧縮して音を均一化して聴きやすくするダイナミクス系に属するエフェクターです。

イコライザーと同様に、ポピュラーミュージックの世界ではミックスダウン時の重要エフェクターであるコンプレッサーの重要なパラメーターは「スレッショルド(Threshold)」「レシオ(Ratio)」「アタックタイム(Attack)」「リースタイム(Release)」となります。

各パラメーターは「ミックスダウンのステップアップ実践講座」でデモンストレーションを行いますので、そこで解説します。

アナログ機器をモデリングした名機コンプレッサー

WAVES API2500

わたし自身もそのひとりですが、ミックスダウン時のコンプレッサーにはアナログ機器の名機をモデリングしたコンプレッサーをよく使用します。

コンプレッサーは音を均一化するのが役割のエフェクターという認識でも間違いありませんが、画像のWAVES「API 2500」もそうですが、アナログモデリング・コンプは圧縮目的だけでなく、サウンドキャラクターを目的に使用します。

コンプレッサーだけでなく、EQも、各メーカーから数々の名盤で聴くことのできる名機をモデリングしたエフェクターは発売されていますが、音はメーカーによって違っていて各メーカで個性があります。

現在のDAWソフトのなかにはアナログモデリングのコンプレッサーやEQも標準で付属しているものもあります。

各パートのコンプレッサー

ボーカルの定番コンプ「UREI 1176」

WAVES CLA-76

最もコンプが使われ、効果がわかりやすいのが音量差のあるボーカルですが、ずっとスタンダードとなっているボーカル用コンプが「ナナロク」と呼ばれるハードウェアの名機「UREI 1176」です。

1176はスレッショルドレベルが固定、Ratioは4、8、12、20の4段階、AttackとReleaseは、一般的なコンプとは逆方向に機能する、インプットレベルを上げてコンプを掛けるなどの特徴があります。

画像は世界のミックスエンジニアでも紹介しているクリス・ロードアルジとWAVESの共同開発したWAVES「CLA-76」となりますが、各メーカーから「1176」をモデリングしたプラグインは発売されていて、メーカーによって音も違います。

ボーカルトラックのレベルを自然な感じに整えてくれるコンプ効果だけでなく、「1176」はサウンドにEQでは得ることのできない独自の明瞭感を出すこともできます。

1176系のプラグインは所有しておいたほうが良い

ボーカル楽曲を制作をしている人はマストプラグインですが、ボーカルの定番コンプとしてだけでなく、1176系のプラグインは他のパートでも使用しますので、所有しておくと良いでしょう。

1176をモデリングしたプラグインを標準付属しているDAWソフトもありますので、アナログモデリング系のコンプを確認してみましょう。

セール中に格安で手に入れることができるIK Multimedia「Black76」も、「1176」をモデリングしたプラグインで、WAVES「CLA-76」とサウンドキャラクターは違いますが、かなりよくできています。

自動設定コンプ

初心者には難易度が高いコンプですが、現在は最適なパラメーター設定を自動で行ってくれるインテリジェント・プラグインも登場しています。

2006年にサイトを公開したときは簡単設定で良い結果の得ることができるWAVES「Renaissance Compressor」などが、初心者にはオススメでしたが、自動で各トラックを解析してコンプ設定をしてくれます。

コンプだけでなくイコライザーなどでも、これからも「自動設定系プラグイン」は登場してくると思いますが、完璧とは言いませんが、知識もなく感覚的にコンプ設定するよりは間違いなく良いです。

わたしが所有している自動でコンプ設定してくれるのは「iZotope Neutron」と、画像の「sonible smart:comp」で、他のコンプを使用するにしても「Neutron」と「smart:comp」の解析結果は参考になります。

トータルコンプで曲全体のバランスを整える

マスタートラックに使用するコンプレッサー

ミックスダウンのマスタートラックに使用するコンプレッサーをトータルコンプと呼び、曲全体のバランスと音圧・音量感を整えます。

トータルコンプを立ち上げるタイミングは本当に個人差があり、ある程度早い段階で立ち上げる人もいれば、ミックス作業の終盤に立ち上げる人もいます。

また、マスタリングとの兼ね合いもありますので、しっかりと音圧アップのためにコンプを掛ける人もいれば、少しだけトータルコンプで音圧アップするという人もいて、ミックス段階でのトータルコンプの掛け具合は人それぞれです。

マルチバンド・コンプレッサー

FabFilter Pro-MB

自分でマスタリングまで行う人のなかには、マスタリング前に質感調整と音圧アップをミックスダウンの段階で行うことが手法として定着している人も増えています。

ミックスとマスタリングを切り離している人は、ミックスの段階ではトータルコンプは強く掛けませんが、ミックスの段階で質感調整と音圧アップをする人は、トータルコンプにはシングルバンド・コンプだけではなく、マルチバンド・コンプレッサー(Multi Band Compressor)も選択肢の一つとして考えます。

上画像はFabFilterのマルチバンド・コンプ「Pro-MB」となりますが、マルチバンド・コンプレッサーは複数の帯域にオーディオ信号を分けて、それぞれの帯域に設定をすることができるコンプレッサーです。

便利な半面、しっかりとした知識がないと、ミックスに逆に悪い影響を与えるため、わたしはマルチバンド・コンプレッサーはミックスの段階では使用せずに、マスタリング時に使用します。

バスコンプでまとまりを出す

まとまりを出す役割のコンプレッサー

IK Multimedia「Bus Compressor(バス・コンプレッサー)」

バスコンプレッサー(Bus Compressor)は、バストラックやマスタートラックにインサートして使用するミックスの密着度をアップさせて、まとまりを出す役割のコンプレッサーです。

現在のミックスダウンはボーカル・グループ、ドラム・グループ、ギター・グループなどバスを組み、バス単位でそれぞれのトラックのサウンドを管理するステムミックスが当たり前のように行われています。

Glue Compressor(グルーコンプレッサー)

バスコンプレッサーはGlue Compressor(グルーコンプレッサー)とも呼ばれますが、各トラックをグループ化しますので、Glueをグループコンプと思われる人もいるかも知れませんが、Glueはグループ(Group)の意味ではなく「接着剤」の意味です。

昔からDAWのミックスの世界でもドラムの一体感を強めてパンチ出すためにドラムのバス・トラックにコンプをインサートして使用するというのが行われていましたが、ボーカルのバス・トラックなどにもバスコンプレッサーを使用するのがスタンダードなミックスの手法となっています。

ステムミックスからマスタリング

通常のマスタリングは2ミックスから処理が行われますが、最近ではステムミックスからマスタリングも行うサウンドエンジニアの人もいます。

ステムミックスからのマスタリングだと、他のパートに影響を与えずにドラムやボーカル・グループの音量やEQ調整が個別にできるという利点があります。

次回「ミックスダウンのステップアップ実践講座」の予告

今回は「ミックス時のコンプ」について書きましたが、字数の問題で「チャンネルストリップ」まで書くことができませんでした。

そのため次回「ミックスダウンのステップアップ実践講座」で、「プリアンプ」「ゲート」「コンプレッサー」「EQ」などが、ひとつに集約されたエフェクター「チャンネルストリップ」について書きます。

タイトルとURLをコピーしました