作詞の基礎講座 05 〜技量が試される重要なサビの作詞〜

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作詞において重要な「サビの作詞」と「譜割り変え」は、作詞家のセンスが最も試されるところです。

第一線で活動したい作詞家は、キャッチーなフレーズで、サビで言いたいことや、伝えたいことを集約する必要があります。

作詞活動をしているアマチュアの人で、プロでの活動どころか、メロ先での作詞をしたいのに「音楽活動を一緒にしてくれる仲間さえも見つけることができない」という人は、この講座を読んで、今一度、自分の作品をチェックしてみて下さい。

重要なサビの作詞

作詞家としての技量が試される

作詞のなかで最も重要なのが曲のサビの部分です。作詞家はもちろん一曲を通してのストーリーテラーとしての技量も必要ですが、このサビの部分のフレーズ作りで最も作詞家としての技量が試され、アマチュアのレベルかプロで活動することのできるレベルに到達しているかを第三者が判断する材料にもなります。

一般的な感覚を持っている人なら、サビの部分で、その曲のなかで自分の「一番言いたいこと」であったり「一番伝えたいこと」を歌詞にするということはわかっていると思うので、この点に関してはあえて書く必要はないと思います。

しかし、サビの歌詞を作るときには「一番伝えたいこと」をフレーズにするだけではなく、そのフレーズは「リスナーの耳に残るか?」「インパクトがあるのか?」などを考慮しながらキャッチーなフレーズを作らなければなりません。

採用されやすい歌詞

このサビ重視という傾向は、詞先が中心だった頃に、ひとつの時代を築いた作詞家の先生方からすると、ハッキリ言うとあまり面白くはない傾向だと思います。

もちろん作詞家志望の人のなかでも、納得がいかないという人もいるとは思いますが、メロディー先行が主流の現在において、実際のところ一曲を通して全体的にまとまりのよい歌詞よりも、サビにインパクトがありキャッチーな歌詞のほうが、圧倒的に採用されやすいのが現実です。

そのため、作曲家にも同じことが言えますが、プロの作詞家として活動して行きたい人は、まず第一にサビに重点をおいて、よいサビのフレーズを作る必要があります。

サビ重視と新人の作詞家

リスナーはサビ重視

なぜ、全体を通してまとまりの良い歌詞よりも、サビがキャッチーな歌詞のほうが採用されやすいかと言うと、最終的に曲の良し悪しを判断するのはリスナーで、多くリスナーは「ほとんどサビしか聴いていないのではないか?」という状況にも関係しています。

このことに関しては「作詞の基礎講座 01 〜レベルアップするための作詞家の心得〜」の「リスナーが曲を聴くスタンス」を読んでもらえれば理解しやすいと思います。

カラオケブームなどで、ストレートで分かりやすい歌詞がビッグセールスを生み出した90年代から「着うた」などもそうかもしれませんが、一般のリスナーの曲の良し悪しの判断はサビです。

熱狂的なファンの人や、マニアックなリスナーの人なら、初めから最後まで曲を聴いてトータルで判断してくれるかもしれませんが、一般のリスナーは、まずサビの良し悪しを判断してから、作品への理解を深めようと作品のなかへ深く入って行こうとします。

これをもっとわかりやすく言い換えると、曲のサビが良くなければ、多くのリスナーには受け入れられないということです。すなわち、売れないということです。

新人の作詞家と売り上げ

かなり特殊な世界にも見えますが、音楽業界も一般の企業と何ら変わりはありません。ビジネスなので確実に利益を追求します。

そのため「サビが良くなければ売れない」という鉄則を壊してまで、無理に冒険するというのはごく少数派です。

例えば株式投資などをしている人ならわかりやすいと思いますが、ある程度の経済的な余裕がない限りは、確率などから検討して可能性の低いところには投資しないというのが普通だと思います。

ある程度キャリアのあるシンガーソングライターや、作詞家の人で、サビ重視のこの傾向を壊そうと、それを実践する人もいますが、やはりセールスという点では成功しているとは言い兼ねます。

言うまでもなく、新人の作詞家は曲がある程度売れなければ、遊びやサークル活動ではないので、作詞で生計を立てるどころか、なかなか次につながることはありません。

売り上げだけを追求して行くというのも、それはそれでまた問題があり、現在のヒット曲が生まれ憎くなってしまった時代の原因の一つでもあります。

それでも趣味ではなく、生活の手段として音楽制作を選んでいる人間にとっては、多くのリスナーに作品が受け入れられるかどうかは本当に重要な問題です。

サビのフレーズと曲のタイトル

サビのフレーズ=タイトル

B'z「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」
サビのフレーズがそのままタイトルになっているという曲があります。今では考えられませんが、CMやドラマとのタイアップがビックセールスに結びつき、どの曲をリリースしても、ミリオンセラーを連発していた ZARD、B’z、WANDS、T-BOLAN、DEENのようなアーティストが第一線で活躍していた時代は、その傾向が特にシングルの場合は本当に強かったと思います。

特にサビの頭のフレーズを、そのまま曲のタイトルにしているヒット作品が多く、思い浮かぶだけでも、WANDS「愛を語るより口づけをかわそう」「もっと強く抱きしめたなら」「世界が終るまでは…」、T-BOLAN「すれ違いの純情」「愛のために 愛の中で」、B’z「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」「ALONE」、ZARD「負けないで」「君がいない」「揺れる想い」「きっと忘れない」、DEEN 「このまま君だけを奪い去りたい」など数多くの作品があります。

1993年03月にリリースされた B’zの12枚目のシングル「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」は、タイトルの長さでも話題になりました。

キャッチーなフレーズを最大限に意識した流れ

今では「サビのフレーズ=タイトル」という傾向は以前程は強くありませんが、上記した曲のようにサビのフレーズをそのまま曲のタイトルにするというのは、個人的にはその楽曲を担当した作詞家が「キャッチーなフレーズ」を最大限に意識した流れだと思います。

もちろん、曲がそのままCMの商品やドラマ等のキャッチコピー的になっていた時代なので、インパクトを重要視するタイアップ先やクライアントの意向や要望もあったのも事実です。

しかし、リスナーのスタンスや時代の流れをキャッチして「サビのフレーズ=タイトル」を「これでもか!」というくらいに使い続けた作詞家の功績は大きいです。

ヒット曲を参考にする

現在は、と言うより昔もですが、別にサビのフレーズを、そのままタイトルに持ってくる必要はありません。

しかし多くのリスナーに受け入れられたヒット曲のタイトルにもなった「キャッチーなフレーズ」や、「どのようにしてサビを引き立てているか」などを参考にすることは作詞活動においてプラスになると思います。

次回の作詞の基礎講座 06では、今回書いた重要なサビの作詞も踏まえた上で「効率的な作詞と譜割り変え」を、実際に例を出して説明します。
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