作詞の基礎講座 02 〜メロディー先行での作詞のほうがよい理由〜

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作詞の基礎講座01の「作詞家の心得編」でも書きましたが、ポピュラーミュージックにおいて歌詞は大変に重要です。

どれだけよい曲で、どれだけボーカルが素晴らしくても、歌詞が悪いとすべてが台無しになってしまいます。

当サイトに寄せられた質問メールで、多かったのは「詩」と「詞」の違いについてと、メロディー先行での作詞についてです。

「詩」と「詞」の違いについては「作詞家の心得編」で触れたので、今回はメロディー先行での作詞について説明します。

今回の作詞講座では、仮の作詞の依頼内容を元にして「どうしてメロディー先行での作詞のほうがよいのか?」ということを中心に説明したいと思います。

詞先での曲作り

曲自体がつまらなくなる

ネット上でも「私の詞に曲を付けて下さい」という作詞家志望の方をたくさん見かけます。もちろん詞を「書きたい」という気持や「書く」という行為自体は作詞家の道を志す人にとって、とてもよいことだと思います。

しかし「作詞家の心得編」を読んだ方なら分かると思いますが、シンガーソングライターの方や、趣味で作詞(作詩)をしている人は別として、作詞オンリーで上を目指している人には、正直なところオススメすることはできません。

なぜなら、詞先での曲作りには「言葉のリズムや響きの問題」など、いろいろな制約が生まれてしまうだけでなく、後から変更する際に融通が利かないため、曲自体がつまらないモノになる可能性が非常に強いからです。

仮の作詞の依頼

上記したことを、次の「作詞が先だと」と「曲が先だと」で以下の仮の作詞の依頼内容を元に、もう少し詳しく説明します。

<作詞依頼>
バスケ、サッカー、野球でも種目は何でもよいですが「重要な大試合の前の選手の気持になって作詞をして下さい。」
この作詞依頼の曲調は映画「ロッキー」のテーマソング「Burning Heart」「Heart’s on Fire」「Eye of the Tiger」や、2009年のWBCでTBSのテーマソングとなっていた Journeyの「Separate Ways」曲みたいな音楽を想像して下さい。

ピックアップ作品『ザ・ベスト・オブ・ロッキー』

ザ・ベスト・オブ・ロッキー
2007年に日本でも公開された映画『ロッキー・ザ・ファイナル(Rocky Balboa)』のサントラとして発売された『ザ・ベスト・オブ・ロッキー』には、歴代の映画『ロッキー』のテーマソングである「Burning Heart」「Heart’s on Fire」「Eye of the Tiger」が収録されています。

また、日本で聴いたことがない人はいないのではないかと思われる「ロッキーのテーマ」の新リミックスも収録されています。

「自分をあきらめない!」がテーマとなった映画自体も、なかなか良かったです。一度引退してから再度、リングへ上がるロッキーの姿に感動した人も多いのではないでしょうか。

作詞が先だと

楽曲全体の可能性を狭める

前回の仮の作詞の依頼でのシチュエーションで、普通の感覚を持っている人なら「負けない」「勝つ」というようなキーワードが思い浮かび、そのキーワードを軸にして詞を書いて行くと思います。

そして「僕たちは必ず勝つんだ」というフレーズをサビに持ってきたり、曲の構成などを、いろいろと試行錯誤しながら、自由に詞を完成させて作曲家に「この詞にメロディーを付けて欲しい」と手渡したとします。

いろいろと試行錯誤しながらも自由に書いた.詞なので「作詩」という観点では、完成した作品はクリエイティブと言えばクリエイティブですが「作詞」という観点では、すでに楽曲全体の可能性を狭めてしまっています。

制約のなかでの曲作り

なぜ、楽曲全体の可能性を狭めてしまっているかと言うと、この手渡された詞に対して作曲家は「僕たちは必ず勝つんだ」というフレーズひとつに対しても、前後のメロディーとのつながり、長さ、語数、言葉の響きなどを、いろいろと考えながら、制約のなかでメロディーを作って行くことになります。

作曲家がメロディーを上記したような制約のなかで、曲を作った結果、言葉とメロディーの絡みによる「独特の気持良さ」「スピード感」「勢い」が失われてしまいます。

それだけでなく、メロディー作りに掛けた時間の割に、「不自然で面白味に欠ける曲」になってしまいがちです。

この作詞の基礎講座 2の冒頭で「どんなよい曲で、どんなにボーカルが素晴らしくても、詞が悪いとすべてが台無しになってしまいます。」と書きましたが、作詞が先だと「どんなよい詞で、どんなにボーカルが素晴らしくても、曲が悪いとすべてが台無しになってしまいます。」というような逆のパターンになってしまう可能性が非常に高いです。

曲が先だと

楽曲制作の可能性が広がる

もちろん作曲家と作詞家の能力にもよりますが、作詞が先だと曲作りにさまざまな制限が生まれ、不自然で面白味に欠ける曲になってしまう可能性が強いです。

それに対して、作曲が先だと、言葉とメロディーの絡みによる「独特の気持良さ」「スピード感」「勢い」などが失われるということがなくなり、楽曲制作の可能性を狭めることがなくなります。

フレーズの選択肢は無限

メロディー先行で詞を付ける場合は、Aメロ、Bメロ、サビなどの構成を含めて、曲全体がすでに完成しています。完成しているメロディーに対して、作詞家は考えながら言葉を付けて行くことになります。

曲が完成した状態での作詞の場合は、メロディーによって「僕たちは必ず勝つんだ」を「必ず勝つんだ僕たちは」に変えることも可能ですし、「僕らは絶対に勝つ」「僕たちは負けやしない」「この勝負だけはけして譲れない」「勝つためにこの場所に居るんだ」のようなフレーズにすることもできます。

言葉のフレーズの選択肢は、作詞家のセンス次第で無限に増えて行くだけでなく、日本語が上手くメロディーに合わない場合などは英語のフレーズに置き換えるなども可能です。

メロ先での作詞のさまざまな利点

微調整も容易で融通が効く

メロディー先行での作詞の利点は前述したことだけではありません。例えば「言葉の数」「リズム」「響き」などの関係で、メロディーの一部を変更したい場合などがあります。

その場合でも、作詞が先の楽曲制作と違い、メロディー先行での作詞の場合は微調整も容易で非常に融通が効きます。

言うまでもないですが、この微調整の作業でも、作詞家のセンスが問われます。

また、メロ先での作詞にはトータルでの楽曲制作の時間も短く済むという利点もあります。

メロ先が主流な理由

もちろん楽曲制作の手法というのは人それぞれ違いますが、作詞を先行させて曲を作って行くよりも、曲を先に制作して、メロ先で作詞をしたほうが、いろいろな利点があり融通が効きます。

これらの理由から、現在の音楽業界ではメロディー先行での作詞が主流となっています。

なぜ、現在のポピュラーミュージックの世界がメロ先が主流なのかは、ここまでに書いてきたことを読んだ方は理解することができたのではないでしょうか?次回は今回の「作詞の基礎講座 02」を踏まえた上で「メロディー先行での作詞のコツを簡単に紹介します。

NEXT → 作詞の基礎講座 03 〜メロディー先行での作詞のコツ〜

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