マスタリングを始める前に、まず各自でお手持ちの機材やプラグインなどを確認して整えてみましょう。
マスタリングのシステムも人によって様々なために一概には言えませんが、マスタリング作業は大まかに分けると、ハード + ソフトでマスタリングを行う人とソフトだけを使ってマスタリングを行う人がいます。
ハードは金銭的にもかなり高額なので、このサイトではDAWソフトだけを使ったマスタリングの作業の説明をします。
マスタリング準備編
2ミックス・ファイルのヘッドルーム
まずマスタリングにはマスタリング用に書き出したミックスダウンした2ミックス・ファイルが必要です。
ヘッドルーム(許容最大レベル量)の空きは5 〜 10dBくらいだと作業しやすいですので、ミックス時にはマスタートラックのレベル量を意識するようにプロのマスタリング・エンジニアの人に言われていました。
最近はヘッドルーム自体をあまり意識しない時代になりましたが、音圧調整はマスタリング時にやったほうが良いですので、この時点で音圧を上げすぎないようにしましょう。
2ミックス・ファイルのRMS
マスタリング前の2ミックス・ファイルのRMS(Root Mean Square)は「ミックス&マスタリングの処方箋」でも詳しく書いていますが、-13 〜 16くらいだと、最近のマスタリング・プラグインなら、自宅でもマスタリング時に無理なくRMS -8 〜 -9くらいは持って行けると思います。
以前は、この時点だと、マスタートラックのリミッターにはWAVES L3シリーズではなく、WAVES L2をあえて使用することが多かったです。
現在はWAVESプラグイン自体を、あまり使わなくなくなり、ミックス時の音量調整には「FabFilter Pro-L2」を使用しています。
補足として書いておくと、一昔前の音圧競争は終わったのですが、マスタリング・プラグインが大きく進化したこともあり、世界的にRMSの数値は -6 台へと突入しています。
マスタリング作業で音圧を上げる
マスタリングで音圧を上げるときにミックスダウンの段階でベストを尽くしておくのが鉄則です。
なぜならマスタリングの作業で、どれだけがんばって2ミックスに迫力や音圧を出そうとしても、ボーカルで一か所だけ音が飛び出し過ぎてしまっていると、その部分だけ歪んでしまうことになり、最適なマスタリングができないからです。
そのためミックスの段階でしっかりコンプレッサーをかけたり、ボリュームデータを書くなりして調整しておきましょう。
コンプを入れた状態で作業
マスタリング初心者の人にワンポイントアドバイスをすると、大音量によるスピーカの破損も防ぐことができますので、ミックスダウンの段階である程度ミックスをしたときに、マスターフェーダーにトータルコンプやリミッターをインサートして、コンプを入れた状態で作業して行くと良いです。
リファレンスになる楽曲
ミックスダウンの基礎講座のほうでも書きましたが、リファレンスとは、これからマスタリングする楽曲と比較する基準となるいわば教材となる楽曲のことです。
マスタリング上達の近道
楽曲制作やミックスダウンでも同じことですが、マスタリングも自分の作品を目指す楽曲に近付けることが、一番の上達の近道です。
自分の曲を知人に聴かせて「この曲〜ぽいネ」と言われた経験がある人もいると思いますが、ミックスダウンやマスタリングでリファレンス曲に自分の楽曲を近付けることは、コード進行やアレンジがある程度明確な楽曲制作とは違い、慣れるまではかなり至難の技です。
そのため、まずはリファレンスになる楽曲に自分の曲を近付けることを目標にマスタリング作業をして行く良いと思います。
リファレンスに最適な曲
もしかすると「どの曲がマスタリングのリファレンスに最適なの?」という人もいるかもしれませんが、リファレンス曲は自分が聴いていて心地よく感じる好きな曲で良いと思います。
ただし、自分の曲の楽器構成や曲調とリファレンスになる曲の楽器構成や曲調が、ある程度同じものでなければ難しい作業になります。
また、マスタリング作業に慣れていない人や、上手く行かない人は、ミックスダウンとマスタリングのリファレンス曲を同じ楽曲にしたほうが、公開中のWEBマガジン『ミックスダウン & マスタリングのコツとテクニック』のように、何度かミックスダウンとマスタリングの作業を行き来することになると思いますので作業しやすいと思います。
もし、予算のある方は授業料を払う感覚で、安価なマスタリング業者にリファレンス曲を提示して、1曲自分の曲をマスタリングをしてもらうのも良いと思います。