パソコンで音楽制作する上で、ドラム、ベース、シンセなどのオケはすべて打ち込みで、ギターとボーカルだけ、もしくはボーカルだけを生でレコーディングするという方も多数いると思います。
確かに近年の自宅録音ではライン入力やソフトシンセなどを使用して、パソコン内部で処理する比率が圧倒的に増えました。これからもDAWシステムを中心とした音楽制作が進むであろうと考えられますが、ボーカルに関しては、デジタル化した現在でもマイクを通して、アナログからデジタルに変換されパソコンに取り込まれます。
マイクから一度パソコンに取り込まれたボーカルの歌声は、場合によってはアナログに再変換されることもありますが、ほとんどの場合はデジタルのままで、ミックスダウン、マスタリングまで処理されることになります。
この「音の入り口マイクの講座とマイク購入のススメ」は、2024年版の復刻コンテンツとなります。
ダイナミックマイクとコンデンサーマイクの2種類のマイク
マイクは音の入り口として、楽曲の音質クオリティーを決める上でも大変に重要な役割を持っています。
そんな音楽制作の上で重要なマイクには、大きく分けると、ダイナミックマイクとコンデンサーマイクの2種類があります。それぞれ構造が違うので、もちろん音の特性も大きく異なります。
ここでは曲の音質を向上させるということを目的に、音質的なことを中心に説明します。とくに現在3000円くらいのカラオケ用のマイクを使用している方は、マイクを変えるだけでも、劇的に音質が向上しますので、自分の声に合ったマイクを選択する上での参考にしてみて下さい。
ダイナミックマイク
ダイナミックマイクはカラオケなどにあるマイクなので皆さんも馴染みがあると思います。代表的なもので1万円前後で買えるSHURE(シュアー)の「SM58」(左画像)や「SM57」があります。ダイナミックマイクの説明で必ず取り上げられる本当に有名なマイクです。
ダイナミックマイクは音質的には中域が強調される傾向にあります。大きい音量の入力に強く、「SM57」はドラムのスネア、ハイハット、シンバルの録音、やギターのアンプ録りなどのにもよく使われます。また非常にダイナミックマイクは丈夫です。
コンデンサーマイク
コンデンサーマイクは値段はピンからキリまであり、マイクケーブルを介してファンタム電源と呼ばれる電源を供給する必要があります。代表的なものでプロのレコーディングの現場でもよく使われ、録音するときの基準となっているNEUMANN(ノイマン)のコンデンサーマイク「U87」や「U67」がありますが、NEUMANNのマイクは高価なことでも有名です。
音質的にはコンデンサーマイクは感度が良く広範囲の音を拾うことができるのでアコースティックギターや、ボーカルなどの音の強弱が大きく、細かい表現をとらえたいパートに特に向いています。
ただし、コンデンサーマイクは湿気や振動に弱く取り扱いが難しいので、はじめてコンデンサーマイクを導入しようとしている方は、低価格ながら定番コンデンサーマイクとなっているRODEの「NT1-A」あたりから検討しましょう。
マイク購入のススメ ~どのようなマイクを選べばよいのか?~
ダイナミックとコンデンサーどちらが良いマイク?
ダイナミックとコンデンサーの2つのマイクは高価だから良くて、安価だから悪いという訳ではありません。
どちらのマイクにもメリットとデメリットがあり、曲調や楽器により使い分けたり、組み合わせて使うこともあります。
コンデンサーマイクの特性が必要か?
マイクを購入するときに「どのようなマイクを選べば良いのか?」本当にたくさんあるので迷うと思います。
本格派ボーカリストを目指す人は予算があるのなら感度が良く広範囲の音を拾うことができる「U87」のようなコンデンサーマイクにしたいと思うことでしょう。
ただし、ここで考えてほしいのは、果たして現在の自分にコンデンサーマイクの特性が必要かということです。
感度が良く広範囲の音を拾うということは、それだけノイズも拾うので、初心者には使いづらかったりもします。
ボーカリストの方が形から入るというのは、ももちろん重要だとは思いますが、個人的には闇雲に自分の声の特性を知らずに高額なコンデンサーマイクを選ぶのなら、SHURE「SM58」ような安額でも良いマイクはあります。
失敗しない宅録マイク選び
スタジオ・サウンド構築ナビ「スタジオマイク導入ナビ – おすすめボーカル用マイクの比較」では、SHUREの「SM58」や「SM57」、RODE「NT2-A」や「NT1-A」のような予算1〜3万円という低価格でありながら、ダイナミックマイクと、コンデンサーマイクの定番になっている製品を紹介しています。
ダイナミックマイクならSHURE「SM58」、コンデンサーマイクなら、Audio-Technica「AT2020」や、RODE「NT1-A」のような定番の低価格スタジオ・マイクを選ぶことをオススメします。
そして、ボーカルをパソコンへの取り込む際に必要なオーディオ・インターフェイスやDTM・DAWソフトをはじめ、ソフトシンセ、プラグイン・エフェクターなどに費用を回して、ある程度パソコンを使用した楽曲制作を覚えることをおすすめします。
どんな良いマイクでもオーディオインターフェイスの性能が悪いと意味がなくなりますので、特にオーディオインターフェイスには気を使ったほうが良いです。
マイク選びの裏技 ~マイクシミュレーターを使う~
マイクシュミレーター
すでに、自宅レコーディング用のダイナミックマイクやコンデンサーマイクを所有している方で、次のマイク購入を考えている方もいると思います。
コンデンサーマイクの購入を考えていて、どれにしようか決めかねている方は「マイクシミュレーター」を使ってみてはいかがでしょうか?
ただし、あくまでもシミュレーターなので本物のコンデンサーマイクと同じという訳には行きませんが、それぞれのマイクの特性は掴むことはできます。
また、マイクシュミレーターはセカンドマイクの購入の際もそうですが、それ以外のミックス作業の用途などにも役に立ちます。
Mic Room
IK Multimediaのマイクシミュレーター「Mic Room」には定番のコンデンサーマイク、ダイナミックマイク、リボンマイクが20種類が収録されています。
使い方は本当に簡単で、入力ソースのマイク・モデルとターゲット・モデルのマイクを選ぶだけで、例えばダイナミックマイクの定番「SM58」などで録音したマイクサウンドがシミュレーターとはいえ高額なレコーディングスタジオで定番のマイクで収録したかのような音に変えることができます。
MICROPHONE MODELER
デジタルMTRにもマイクシミュレーターが付属している機種がありますが、DAW環境で制作している人には定番のボーカルピッチ補正プラグインソフト「Auto Tune」で有名なAntares(アンタレス)の90種類以上のモデリングマイクを収録する「Mic Mod(旧 Microphone Modeler)」をオススメします。
名前の通りマイクをシュミレートするプラグインで、Neumannの「U87」はもちろんのこと「U47」やSonyの「C800G」などの名マイクも多数あり、Source Micで自分の持っているマイクを選択し、Modeled Micでシミュレートしたいマイクを選ぶだけです。
Proximityでマイクとの距離も調整することができますので、1inchは 2.54 Cmと覚えておくと良いです。一般的に歌を録音するときのマイクとの距離は10〜20Cmなので、4〜8inchくらいにProximityを設定します。
このプラグインは値段もお手ごろで、マイクのプリセットを変えると、強弱の付き方が変わったり、EQだけではできない、音のキャラクターそのものを変えることができます。
様々な楽器に使うことができるマイクシミュレーター「Microphone Modeler」は、一世代前のDAW環境でミックスダウン時に重宝していたので、個人的に好きなプラグインでした。