作詞の基礎講座 04 〜言葉の響きとインパクト〜

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ここまでの作詞の基礎講座01〜03を読んできた人は「作詞」というのは文章として読まれているうちは、あまり評価の対象にはしてもらえず、自分の書いた詞が文章として内容が素晴らしく、綺麗に美しく整っているだけでは、よい詩であっても、けしてよい歌詞ではないということを理解することができたと思います。

これは作詞だけでなく、作曲や編曲にも言うことができますが、作詞における手法や表現人法に関する考え方というものは、時代とともに「これじゃ駄目だ」が「これが良い」になり、「これがよい」と思われていたものが、古いので「これじゃ駄目だ」のように変わって行くこともあります。

時代と関係なく作詞で大切なこと

リスナーにインパクトを与えるフレーズ

時代が変わっても一貫して作詞で大切なことは、詩的に優れていることはもちろんのこと、メロディーと歌詞がひとつになったときに、リスナーの耳に残り、時には「ハッ」とさせられるようなインパクトのある歌詞を作ることです。

例えば、ミリオンヒットを記録した楽曲であっても、昔のヒット曲の歌詞をすべて覚えていて、歌詞カードを見ずに、歌うことができるというようなリスナーはマレで、ほとんどいないと思います。

しかし、昔、よく聴いていた曲のワンフレーズだけは覚えていて、その箇所だけは、今でも歌えるというリスナーは少なくありません。

これはCMなどとのタイアップの関係もあり、特にサビのフレーズが多いですが、インパクトを与えたフレーズというのは、どれだけ時間が経ってもリスナーが忘れることはありません。

インパクトを与えるフレーズのヒントについては、このページの「音の響きを重視して歌詞の言葉を選ぶ」で、簡単に触れていますので、そちらを参照してみて下さい。

オリジナリティーとポピュラリティーのバランス

作詞家を志している人にあえて説明する必要もないと思いますが、誤解を与えてしまうと申し訳ないので書いておきますが、インパクトのある歌詞とは、人の使わない過激であったり、メチャクチャで、わかりづらいことを書いた詞のことではありません。

これは作詞だけでなく、楽曲制作全般に言えることなのですが、特にポピュラーミュージックの世界では「オリジナリティー」と「ポピュラリティー」のバランスが大切です。

ここで「オリジナリティー」と「ポピュラリティー」のバランスについて書くとかなり長くなってしまうので「作詞家プロへの道」を参照してください。

少し意味を含んだ言い人をすると、自分の他に誰かが存在する限りは、個性のない人間というのは一人もいないということです。

社会情勢を知り一般常識を身につける

時代の流れと社会情勢の把握

ポピュラリティーということでひとつ書いておくと、先程「オリジナリティーとポピュラリティーのバランス」でも触れましたが、社会情勢を知らないで、浮世離れしてた詞を書いても、なかなか評価されることはありません。

また作家は時代に敏感でなければイケナイので、新聞を読むなりニュースを見るなりして、必ず時代の流れや社会情勢は把握しておきましょう。

そして、「詞という形」でなくてもよいので、ニュースなどで自分が感じたことなどを、ノートやワープロでメモしておきましょう。

そこでメモしておいたものが、もちろん即座に作詞活動に活かすことができる場合もありますが、後に作詞の仕事を発注されるようになってから、本当の意味での財産となることが実感することができます。

時間的に毎日ニュースをチェックすることが難しいという人などは、週末に一週間のニュースをまとめてくれる情報番組もありますので、その番組を録画するなどしてチェックすると良いと思います。

一般常識を身につける

作詞家志望の人というのは言葉を大切にする人が多いので、そんなに心配はいらないと思っていたのですが、一般的な常識のない人がいます。

インターネットということもあると思いますが、当サイトにメールをくれる人のなかにも、面識もないのに関わらず、友達に送っているような挨拶なしの1、2行の失礼な「教えてクレクレ」メールを送ってくる人もいて、こちら側も本当にあきれてしまいます。

わたしはそのような、一般常識を持っていない人とは、交流を持ちたくないので、すべてスルーしていますが、驚くことに40歳を過ぎた人でも上記したような常識に欠けた人がいました。

10代や、20代前半までは、ある程度は大目に見てはもらえますが、それ以降は誰にも相手にされなくなって行きます。

これは音楽の世界だけではありませんが、どんな世界でも一般常識と、最低限のビジネスマナー的なモノは持っていなければなりません。

実際に作品以前の問題で、常識のなさで相手にされていないという人も、数多く存在しています。一般常識のない人に、「愛」だの「人生」だのを語られてもそこに説得力があるハズがないことは言うまでもないと思います。

ボーカリストと歌詞決定ポイント

歌とは?

メロディーに歌詞という言葉が乗ります。ボーカリストはそのメロディーと歌詞を、自分の解釈でまとめあげ、ひとつの世界を作り上げます。これが歌です。

詞を書いている人のなかには納得が行かないという人もいるかもしれませんが、「リスナーが曲を聴くスタンス」でも触れているとおり、楽曲の主役は、ひとつの世界を作り上げるボーカリストです。

作品はボーカリストのもの

作家の手を離れた作品というのは、もちろん著作権は作家が所有しますが、ボーカリストのものです。ボーカリストのものにならなければ、多くのリスナーに受け入れてもらうというのは、まず無理な話です。

そのため、メロディー先行での作詞では、必ず言葉がメロディーに乗ってボーカリストにより歌われることを前提に詞を作って行かなくてはなりません。

ただし、故・川内康範さんが作詞した「おふくろさん」に許可なくセリフを足した「おふくろさん騒動」というのがありましたが、この問題は上記した「作家の手を離れた作品はボーカリストのもの」とは、まったく意味合いが違い、作詞家への敬意が欠けていて、モラルの問題で完全な違反です。作詞家は怒って当然のことです。

ボーカリストの解釈

徳永英明『VOCALIST シリーズ』
ボーカリストのメロディーと歌詞の解釈という点で、参考になるのが、昔の曲をカバーした徳永英明さんの『VOCALIST シリーズ』などです。

原曲とはアレンジが違うということも、もちろんありますが、ボーカリストの楽曲の解釈により、オリジナルとは、ひと味もふた味も違う空気感が出るということを実感することができると思います。

歌詞決定の判断ポイント

最終的に歌詞を決定する際の、判断のポイントは、もちろん実際に歌ってみてから決めることになります。

メロディー先行での作詞のコツで「実際に歌ってみて、不自然であったり、歌いづらい詞は、作詞としては失敗作」と書きましたが、作詞をする際に、イントネーションなど、一つ一つの言葉の「音の響き」や「感覚」などを考慮するということは、すでに言うまでもないと思います。

そのため、まずはメロディーにフィットする言葉を付けることができるようにならなくてはなりません。

そして、「音の響き」をクリアすることができるようになったら、リスナーに与える「インパクト」について考える必要があります。

インパクトを与える言葉

詞に理論や難しい言葉は必要ない

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ここまでの講座を読んできた人のなかには、作曲家が作ったメロディーに、「どのような言葉を乗せたら、リスナーにインパクトを与えることができるのだろうか?」「ボーカリストが上手にメロディーと歌詞をまとめあげて、ひとつの世界を作ることができるだろうか?」など深く考えてしまった人もいると思います。

世の中には、さまざまな理論であったり、難しい言葉で自分の正しさを証明したがる人がいますが、少なくとも、歌詞に関しては、さまざまな理論や難しい言葉というのは必要ありません。

さまざまな理論や難しい言葉でリスナーの胸を打つことは、けしてありません。

時間が経っても忘れないフレーズ

リスナーにインパクトを与えるフレーズのヒントはとても身近な、今までに自分の聴いてきた既存のヒット曲のなかにありますので、まずは「もう何年も聴いていないけれど、昔はよく聴いていた」というCDを引っ張り出してきてみて下さい。

次に、音楽を再生しないで、そのCDのなかに収録されている楽曲で、真っ先に思い浮かぶ、歌詞を書き出してみて下さい。

その書き出した歌詞が「時間が経っても忘れないインパクトを与えるフレーズ」のヒントです。

きっと誰にでも理解する言葉の何気ないフレーズで、人の使わない言葉で書かかれた歌詞ではないと思います。(一般論です。)

また、作詞家を目指している人は、その書き出した何気ないフレーズのなかにも、その楽曲の作詞を担当した人の、こだわりなどを、その当時、聴いていたときよりも、明確に感じることができると思います。

<作詞活動の場所が広がる>
今回は作詞での言葉の響きとインパクトについてを「オリジナリティー」と「ポピュラリティー」に触れながら解説しましたが、今回の講座で書いたことを理解し、クリアすることができたときに、本当の意味での作詞活動の場所が広がって行きます。
しかし、作詞で上へ登って行こうとしている人が、もし言葉の響きとインパクトについてを理解しないままに、作詞活動を続けて行ったとしても、どれだけ活動を続けても、高いレベルでの活動は難しく、「作詞」ではなく「作詩」のままで終わってしまう可能性が高いです。
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