作詞の基礎講座 03 〜メロディー先行での作詞のコツ〜

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作詞の道を志す人で、このサイトの公開と同時に開始したオンライン楽曲制作企画の「オンラインBAND」や「Song Line」の門を叩いた作詞家志望の人は本当にたくさんいましたが「メロディー先行での作詞」の壁にぶつかり、自信をなくされた人も少なくはありません。

音楽の世界で求められている人材は「作詩」をする人ではなく、作詞をする人です。作詞の道を志している人が詩的な表現が上手かったり、ストーリーテラーとして、そこそこ優れているのは当然のことです。

作詞で重要なのはメロディー先行での作詞のなかで、それをどうやって自分の言葉で表現するかです。

少し厳しいですが、職業としての作詞家を目指している人は、メロディー先行での作詞に対応できないと、作詞家としては、まったく相手にされないと言っても間違いではないです。

そのようなことを踏まえて、この作詞の基礎講座 03では、メロディー先行での作詞のコツを簡単にですが紹介したいと思います。

音的に不自然ではないことが重要

フィットする言葉を見つけて行く

メロディー先行での作詞のコツをつかむために、まず第一にすることはメロディーを頭にインプットすることです。メロディーを頭にインプットしていれば、寝るまえでも通学や通勤途中でも作詞をすることができます。

メロ先に慣れるまでは、詞自体の意味が通じなくてもよいので、その頭にインプットしたメロディーを、とにかく繰り返し、口ずさみながら、はじめはワンフレーズずつ、メロディーに適当な言葉を当てはめてみるとよいと思います。

この時点で重要なのは、当てはめた言葉がメロディーに対して、音的に不自然ではないかどうかです。口ずさみながらフィットする言葉を見つけて行くということが目的です。

もちろんメロディーにフィットする言葉は、メモ帳でもノートでも何でもよいので、すべて書き留めておきます。

まずは音に慣れる

上記した作詞法は、今まで「作詞ではなく作詩」をしてきた人のなかには違和感があるかもしれませんが、中途半端にストーリーなどを決めて「それっぽい感じ」で、1曲を通して詞をまとめあげるよりも、メロ先に慣れるという点では遥かに効果的です。

とくにシンガーソングライター系の人が多いですが、実際にプロの作詞家でもフレーズを切り貼りするコラージュ的な作詞をしている人もいます。

コラージュ的な作詞は、もちろん後から意味が通じるように修正して行く必要がありますが、メロディー先行での作詞に慣れていない人は、まずは音に慣れるということが必要です。

オンライン楽曲制作企画の「オンラインBAND」や「Song Line」に参加して、メロ先の壁にぶつかり「自分には作詞は向かない」と作詞家の道を断念した方の多くは、音に慣れていないにも関わらず、最初から最後まで「詞をまとめあげる」ことに、こだわりすぎた人が多かったです。

メロディーに言葉を乗せる作詞

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メロ先での作詞に慣れると

メロディー先行での作詞は「メロ先」とか「ハメコミ」の作詞とも言われます。メロディー先行での作詞をはじめたばかりの人にはとても難しい感覚だと思いますが、メロ先での作詞に慣れて、コツがつかめてくると、メロディーに言葉数を合わせるという感覚の作詞から「メロディーに言葉を乗せて行くという感覚」の作詞になってきます。

細かいところまで気が回って行く

上記した感覚の作詞になってきたら、音が体に馴染んだ証拠なので、ハメコミ的な感覚からは解放されて、かなり自由な表現をすることができるようになり、「言葉の響きやノリ」であったり「言葉のニュアンス」などの、かなり細かいところまで気が回って行きます。

そのレベルまで到達したら、今度は詞が一人よがりにならないように「僕という立場」で書いてみた詞を、主人公を置き換えて、「君という立場」で書いてみたりしながら、数パターンの作詞をしてみましょう。

いろいろなパターンの作詞をして、その中からまた新たなひとつの空気観や世界観の作詞をするのも非常に面白いと思います。

オケに合わせて歌って作詞する

詞の不自然な箇所を明確にする

書かれた詞が文章として、どれだけ内容が素晴らしく、綺麗に整っていても、実際に歌ってみて、不自然であったり、歌いづらい詞は、作詞としては失敗作です。

そのことを踏まえた上で、よい作詞家への一番の近道は、できるだけオケに合わせて、自分で作詞したものを自分で歌うか、歌うことができなければ、ボーカリストに歌ってもらうことです。

その際には必ず歌を録音しておくとよい思います。なぜなら、録音されたものを、あらためて聴くと、自分の作品に対して客観的になることができ、詞の不自然な箇所や、どこがイケナイのかなどが、明確に見えてくるからです。

英語詞に置き換えて使う場合もある

言葉の響きについては「作詞の基礎講座 04」以降で公開していますが、メロディーに対して言葉が不自然な箇所などは、言葉の響きなどの問題もあり、もちろん狙って使う場合もありますが、日本語を英語詞に置き換えて使う場合もあります。

第三者に評価してもらえる状態

デモ音源にしておく

何度も上記した作業を繰り返し、試行錯誤しながら完成させた作品は、しっかりと第三者に評価してもらうことができるような状態にしておくことをオススメします。

以前、「詩と詞の違い」で、「詩の状態では歌詞はメロディーがあることが前提なので、何かが開けるという可能性は限りなくゼロに近い」と書きましたが、第三者に評価してもらえる状態というのは、自分の書いた歌詞をボーカリストに歌ってもらうか、自分で歌い「デモ音源」にしておくということです。

用意するオケは未発表の曲がベスト

用意するオケはすでに世界観が完成してしまっている発表されている曲ではなく、まだ、誰にも詞を付けられていない未発表の曲がベストです。

それは、すでに発表されている曲は、その作品の責任者が多くの作詞家に歌詞を書かせるコンペや、一人にピンポイントで発注する決め打ちにしても、さまざまな選択肢のなかから、最終的にOKを出した結果なので、作品のなかに新たに入り込むスペースというのは残されていないからです。

ただし、これからプロの作詞家の人は未発表の歌詞の付いていない状態の楽曲を、なかなか用意することができないのが実状だと思います。

その場合は歌詞がついている曲でもよいと思いますが、既存の世界観の影響を受けやすい日本語よりも英語の楽曲をセレクトすることをオススメします。

作詞活動に専念することができる環境

詳しくは「作詞のステップアップ講座」以降で書いていますが、参考までに書いておくと、これから作詞で登り詰めて行こうという人は、自分に歌詞を書かせてくれる、実力があり将来有望な作編曲家やバンドなどの音楽パートナーを探し、まずは作詞活動だけに専念することができる環境を整えることが第一歩です。

これはあくまでも確率の問題ですが、上記したことが最も有効な手段だと思います。そのため自分の書いた詞を第三者に評価してもらえる状態にして「素人の活動ではない」ということを証明することが重要です。

日本語の音楽を洋楽的に響かせる

日本語と英語を歌詞のなかで同等に使用

今では一般的となり、日本語と英語のおり混ざった音楽を皆さんも何の違和感もなく耳にしていると思いますが、この日本語と英語を歌詞のなかで同等に使用するという背景には、先人の偉大なミュージシャン方々の作詞における、さまざまなな工夫と挑戦があります。

日本の音楽の歴史のなかで、日本語の音楽をどのように洋楽的に響かせる工夫を凝らした作詞法とボーカル法で商業的に大きな成果を上げて、成功したアーティストのなかには、今でも皆さんがTVやCMで見かける矢沢永吉さん、佐野元春さん、桑田佳佑さんなどがいます。

日本語を英語的に発音

桑田佳祐『いつも何処かで』
また、矢沢永吉さんや、桑田佳佑さんは、日本語の歌詞でも、英語的に発音させて歌っています。

例えば「日本語の歌詞を英語的に発音」ということで極端な書き方をすれば「感動した最高に」というフレーズであれば「かんどうしたさいこうに」と発音するのではなく、「キャんどうしたシャいこうに」というように発音して、「壊れて行く心」というフレーズであれば「こわれていくこころ」というふうに発音するのではなく、「キョわれてゆくキョキョろ」というような感じに発音させます。

日常会話のなかで、このような発音をすれば必ず笑われますが、彼等の独特で優れたボーカル法により、リスナーにメロディーと歌詞の絡みによる心地よさを感じさせてくれています。

もちろん、これはメロディーとの兼ね合いがとても重要で、楽曲のなかで彼等は無駄に日本語の歌詞を英語的に発音さるというようなことはしていません。

そのため、リスナーは日常的には不自然な発音ではあっても、違和感を感じることはありません。

2022年11月にリリースされた桑田佳祐 さんのベストアルバム『いつも何処かで』では、彼の言葉のセンスを満喫することができます。

ベストアルバムに収録される「いつか何処かで」「波乗りジョニー」「悲しい気持ち」「白い恋人達」などは、時代を代表する大ヒット曲であると同時に名曲です。

作詞のなかでの英語の活用

英語の活用は作詞家の感性

作詞のなかでの英語の活用は、作詞をする人の感性だと思います。作詞家のセンス次第で、英語が効果的になる場合もありますが、いかにも素人っぽくなってしまう場合もあります。

英語を取り入れる作詞については、作詞の基礎講座の「英語を使う作詞法」「作詞に使える英語のワードリスト」「英詞に役立つツール」などで解説しているので、そちらを参照してください。

佐野元春さんの作詞の手法

佐野元春『THE SINGLES EPIC YEARS 1980-2004』
代表曲「Someday」で知られる佐野元春さんの作詞の手法や楽曲制作手法は、日本の音楽シーンに革命を起こしました。

「佐野チルドレン」という言葉があり、彼の音楽に影響を受けたアーティストにはMr.Childrenの桜井和寿さんや尾崎豊さんをはじめ数多く存在します。

元Do As Infinityの伴都美子さんや、中村あゆみさんなどがカバーアルバムで佐野さんの曲をカバーしています。

佐野元春さんの入門盤は「Someday」が収録されている『EPIC YEARS THE SINGLES 1980-2004』と『20th Anniversary Edition 1980-1999』です。

佐野元春さんの作詞の手法などに興味のある人などはチェックしてみるとよいと思います。

リアルタイムに佐野さんの音楽を聴いていたわけではないので、その時代の世の中の空気感というのは、わたしには分かりませんが、彼の曲をベスト盤を通して聴いたときに、昔の曲は「ナツメロ」「歌謡曲」というイメージは払拭されました。

特に「ダウンタウンボーイ」のカタカナ英語と日本語の組み合わせは圧巻で「この人は本当に日本人ですか?」と思ったくらいです。

もし、日本語をどこまでも大切にする金八先生(武田鉄矢さん)と、日本語も英語も同等に使う佐野元春さんとのフリートーク番組みたいな企画があれば、ぜひ観てみたいです。

佐野元春さんの入門盤は「Someday」が収録されている『THE SINGLES EPIC YEARS 1980-2004』と『20th Anniversary Edition 1980-1999』です。佐野元春さんの作詞の手法などに興味のある方などはチェックしてみるとよいと思います。

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