作詞の基礎講座 01 〜レベルアップするための作詞家の心得〜

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作詞は曲の空気観や世界観を決定するとても重要な作業です。趣味で作詞をしている人は別ですが、真剣に作詞家として高みを目指していて、仕事レベルでの活動を考えている人は、この作詞講座をぜひ参考にしてみて下さい。

この「作詞の基礎講座01」では、主にレベルアップするための「作詞家の心得」みたいなものを書いています。

2024年に少し内容を付け加えて「作詞の基礎講座01」の再公開を開始しました。

作詩と作詞の違い

歌われることが目的の言葉

作詞をしている方のなかでも「詩」と「詞」の違いを以外と区別が付いていない人が多いのではないでしょうか?

「詩」と「詞」の違いを簡単に説明すると「詩」は読むための言葉で、「詞」は歌うための言葉です。

「詩」は活字なので読み直してでも、その意味が分かればよいのですが、「歌詞」は言葉が耳から入ってきます。

まず音楽を聴くときに歌詞カードから見るという人は一般的にはいないと思いますが、「歌詞」はメロディーがあることが前提で、歌われることが目的の言葉です。

よい作詞家になる近道

よくネットでも、「わたしの書いた詞を見て下さい」というようなブログやホームページなどのサイトを目にしている人もいるかもしれませんが、メロディーがない状態で公開されている作品は「作詞」ではなく「作詩」です。

作詞家志望の人が「詞」ではなく「詩」の状態で作品を公開しても、「歌詞」はメロディーがあることが前提なので、何か道が開けるという可能性は限りなくゼロに近いと言っても過言ではないです。

詳しくは「作詞の基礎講座2 〜メロディー先行での作詞のほうがよい理由〜」以降で説明しますが、作詞家として道を切り開いて行きたい人は、まずは「詩」と「詞」の違いを理解することが、よい作詞家になる近道だと思います。

専業作詞家の実状

専業作詞家は特殊な職種

専業作詞家(職業作詞家)は現在の音楽界では特殊な職種です。作詞家は本当に数多く存在していますが、メジャーで作品をリリースしている人でも作詞だけで生活できている人は少ないのが現状です。

その理由は、最近はボーカリストが作詞を担当するケースや「作詞」「作曲」ともに自分でする「シンガーソングライター」「バンド」「作編曲家」が増えているからです。

言葉のプロは少なくなっている

ELT 持田香織
また現段階で自分では詞を書くことができない若手のボーカリストにも、後々は自分で詞を書いたほうがよいと勧めます。

例をあげると現在では多くの人がELT(Every Little Thing)の持田香織さんの書く詞を支持していますが、そんな彼女もデビュー当初からメジャーシーンに駆け上がるまでは、自分では作詞をしていませんでした。

しかし、ある時期を境にして彼女自身で作詞をするようになり、現在では作詞家としての彼女独特の世界観を築いています。

このような状況からも分かるように、言葉のプロである専業の作詞家というのは、最近では本当に少なくなっています。

もちろん、これは作詞家だけに言えることではありませんが、少子化やネットでの音楽の不正コピーを背景とするCDセールスの売り上げの低迷も、上記の状況に拍車をかけていて、特に新しい専業作詞家の才能が生まれにくい状況になっています。

ピックアップ作品 ELT「ソラアイ」

Every Little Thing 26枚目のシングル「ソラアイ」のサビの「晴れるわけでもない空を〜今日を期待して生きてみる」などは良フレーズで本当に「彼女らしい」歌詞だと思います。

「ソラアイ」は『Every Best Single ~COMPLETE~』『Commonplace』『14 Message – Every Ballad Songs 2』などのEvery Little Thingのアルバムに収録されています。

80〜90%以上がメロディー先行

「詞先」の依頼というのはほとんどない

自分の作詞したモノにメロディーが付くと勘違いされている人が、かなりの人数いると思いますが、作詞で「詞先」での依頼というのは、ほとんどありません。

演歌や一部の特殊なジャンルの音楽を除くと80〜90%以上がメロディー先行での作詞です。

まず、この仕組みを理解していないと、職業としての作詞家の道を切り開いて行くのが、かなり厳しいというのが現実です。

なぜなら、作詞家は作編曲家(サウンドクリエーター)とは違い、特に必須スキルがあるわけではなく、志望者が多いからです。

相手があってのもの

実績のある脚本家、小説家、コピーラーターの人などの一部の例外を除くと、作詞家志望の人で「わたしの詞に曲を付けて下さい」というスタンスでは、作詞家を仕事としてやって行くのは非常に難しいのが実状です。

それは、どれだけ感性が飛び抜けていて、立派に表現者として成り立っていたとしてもです。

とにかく相手があってのものなので、道を開く手掛かりさえ、なかなか、つかむことができない思います。

参考までに「メロディー先行」は「メロ先」「曲先」「ハメコミ」などとも呼ばれますが、この作詞講座では主に「メロディー先行」と「メロ先」で統一させてもらいます。

ピックアップ『歌詞から作曲できるようになる本』

2012年09月に発刊された『歌詞から作曲できるようになる本』は言葉が書ければ誰でも作曲できる可能性はあるという視点の、今の時代ではすごく珍しい内容の作詞本です。

作詞ではなく作詩が好きな人は、一度読んで、自ら作曲をしてみると、なぜ、メロ先が中心なのか分かるかもしれません。また第二部の「これだけは知っておきたい 歌詞の基本」は参考になるのではないでしょうか。

リスナーが曲を聴くスタンス

歌詞の内容は後で理解できればよい

専業作詞家の項を読んで少しがっかりした方もいるかもしれませんが、どれだけ曲が良くても、詞がよくなければ、リスナーに評価されることはありませんので、ポピュラーミュージックにおいての作詞はとても重要です。

しかし今も昔も歌詞より先に曲のよさや歌の力でリスナーに楽曲が評価されることがほとんどです。

リスナーの判断基準は歌詞ではない

このことを分かりやすく説明すると、日本人のリスナーが洋楽の新曲を聴いて、英語が得意な人は別ですが、すぐに歌詞の意味まで把握して理解することができる人というのは少ないと思います。

ほとんどのリスナーの自分の好きな曲か否かの判断基準は、その楽曲の曲調であったり、ボーカルの声質や歌唱力です。

歌詞の内容は後で歌詞カードを見て理解することができればよいというのが一般的なリスナーのスタンスです。

歌詞の内容は二の次

映画『卒業』
1967年に制作されたマイク・ニコルズ監督、ダスティン・ホフマン主演の映画『卒業』のオープニング曲でもあるサイモン & ガーファンクルの名曲「Sounds Of Silence」は、日本でも人気がありますので、誰でも一度は聴いたことがあると思います。

高校の音楽の授業でもビートルズの「Yesterday」やカーペンターズの「Yesterday Once More」と同様に、音楽の授業の合唱で歌ったことがある人もいるのではないでしょうか?

この曲が授業で歌われる理由はメロディーやハーモニーの美しさですが、「Sounds Of Silence」の歌詞の内容は「科学技術の発展により人間の心が無感覚になっていることへの嘆き」であり、非常に奥が深い内容です。

もし、高校生が「Sounds Of Silence」の歌詞の内容を理解したうえで、合唱で歌っているのであれば、その姿を想像するだけで、かなり異様な光景と言っても過言ではありません。

また何年か前の新聞に載っていましたが、高校の教科書にも載っているビートルズの代表曲であり名曲でもある「Yesterday」は、実は恋人への想いを書いた曲ではなく、母親への想いを書いた曲なのだそうです。寝て起きたときにはすでに曲は完璧に完成していたそうです。

上記したことからもわかるように、音楽を教える立場の人間でも歌詞の内容は二の次というより「あまり深くは考えていない」というのが現状ではないでしょうか。

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